人手が足りないとき、真っ先に削りたいのは、お客様の目に触れない手作業です。紙の台帳、口頭での連絡、同じ数字の転記。こうした作業は一つずつは小さくても、毎日積み重なります。
このページでは、旅館・ホテルの業務を8つに分け、業務ごとに次の4点を整理します。8つの分け方は、宿泊DXラボの「DXかんたん診断」と同じです。
- よくある手作業
- 改善の方向
- 確認する数字
- 診断で対応する質問
1. 経営
- よくある手作業
- 売上や稼働の数字を月末にまとめて確認し、部門別の収益は表計算で集計し直している。
- 改善の方向
- 毎日・毎週・毎月見る数字と、その数字を見て何を決めるかを決めます(経営KPIの設計)。数字の数を増やすより、判断につながる数字に絞ることが大切です。
- 確認する数字
毎週見る数字を3〜5個に絞ります。例として、稼働率、ADR、RevPAR、予約ペースがあります。
- ADR:客室売上 ÷ 販売した客室数
- RevPAR:客室売上 ÷ 販売できる客室数
- 診断で対応する質問
- 主要な経営指標をどの頻度で確認していますか?
- 部門別・施設別の収益性を把握できますか?
2. 予約・販売
- よくある手作業
- 複数のOTA(予約サイト)の在庫や料金を、それぞれの管理画面で手作業で更新している。自社予約を増やす施策が、思いついたときだけになっている。
- 改善の方向
- PMS、サイトコントローラー、OTA、自社予約の連携状態を整理し、在庫と料金の更新の手作業を減らします。
- 公式サイトの予約導線、プラン設計、Googleとの連携を見直し、自社予約を増やします。
- 確認する数字
- 自社予約の比率と、OTA手数料の合計を一度見える化します。
- 診断で対応する質問
- PMS・サイトコントローラー・OTAの在庫/料金連携は?
- 自社予約を増やすための施策を継続的に行っていますか?
公式サイトでの予約から、フロントの管理画面に予約が届くまでの流れは、ラボの「予約エンジンデモ」で体験できます。
3. 会計
- よくある手作業
- PMSの売上を会計システムへ手入力で転記し、入金と売掛の照合も手作業で行っている。
- 改善の方向
- PMSと会計の連携方式(CSVかAPIか)を検討し、転記の回数を減らします。仕訳の粒度、税区分、部門管理が会計側の要件に合うかも確認します。
- 確認する数字
- 売上が会計に届くまでに、何回手入力しているかを数えます。
- 診断で対応する質問
- 売上データを会計システムへ入力する方法は?
- 入金照合・売掛管理はどの程度自動化されていますか?
4. 業務(清掃・フロント)
- よくある手作業
- 清掃の指示と完了報告を、紙や口頭、内線電話で行っている。チェックイン前後の定型業務(名簿の準備、案内の送付など)を、毎回手作業で行っている。
- 改善の方向
- 清掃の指示、完了報告、客室の状況(清掃中・点検済み・販売可など)を、スマートフォンなどで共有します。導入を比べるときは、PMSとの連携、多言語対応、使う端末、現場での操作のしやすさを確認します。
- 確認する数字
- 紙・口頭で行っている業務を3つ書き出し、それぞれにかかる時間を測ります。
- 診断で対応する質問
- 客室清掃の指示・進捗確認は?
- チェックイン前後の定型業務は?
予約から部屋割り、客室状況表までのつながりは、ラボの「簡易PMSデモ」で試せます。
5. 勤怠・シフト
- よくある手作業
- シフトを表計算や紙で作り、勤怠の実績を給与計算のために入力し直している。
- 改善の方向
- 勤怠の実績、シフト、給与の連携をまとめ、集計の作業を減らします。導入を比べるときは、給与ソフトとの連携、変形労働時間制への対応、権限の設定、操作性を確認します。
- 確認する数字
- シフトの作成と勤怠の集計に、毎月どれくらいの時間がかかっているかを測ります。
- 診断で対応する質問
- シフト作成は?
- 勤怠実績と給与・人件費管理は連携していますか?
自分の地域が、全国と比べて人手を確保しにくい条件かどうかは、「地域の省人化・DX検討指標」で確認できます。
6. システム
- よくある手作業
- 同じ予約や顧客の情報を、PMS、予約サイト、会計、POSなど複数のシステムへ入力している。
- 改善の方向
- PMS、会計、POS、予約、勤怠のあいだで、データがどう流れているかを棚卸しします。新しいシステムを足す前に、今あるシステムがCSVやAPIで連携できるかを把握します。
- 確認する数字
- 使っている仕組みのつながりを1枚の図にし、二重入力が起きている箇所に印を付けます。
- 診断で対応する質問
- 同じ情報を複数システムへ二重入力することは?
- 主要システムのAPI/CSV連携可否を把握していますか?
7. 集客
- よくある手作業
- OTA、自社サイト、Google、SNSの成果を、それぞれの管理画面で別々に見ていて、比べられていない。
- 改善の方向
- 予約経路ごとの売上、手数料、予約単価、キャンセル率を、同じ表で比べられるようにします(チャネル別の収益管理)。
- 確認する数字
- 予約経路ごとの売上と手数料を並べます。
- 診断で対応する質問
- OTA・自社・Google・SNSの成果を比較していますか?
- チャネル別の獲得コストや手数料を把握していますか?
海外からのお客様について、地域でどの国・地域の宿泊が多いかは「インバウンド宿泊者分析」で確認できます。
8. データ活用
- よくある手作業
- ADR、稼働率、RevPAR、予約ペースが別々のファイルにあり、判断のたびに集め直している。
- 改善の方向
- 主要な数字を一画面にまとめ(経営ダッシュボード)、定例の会議で使います。数字の定義と更新の頻度を先に決めておくと、部署ごとに数字が食い違うことを防げます。
- 確認する数字
- ADR、稼働率、RevPARを毎週確認します。
- 診断で対応する質問
- ADR・稼働率・RevPAR・予約ペースを一画面で見られますか?
- データを使って具体的な意思決定をしていますか?
地域の料金の動きは、「宿泊料金トレンド」で、同じ宿泊条件の比較施設群の値動きとして確認できます。
どこから手をつけるか
8つすべてを一度に変える必要はありません。次の順番をおすすめします。
- 「DXかんたん診断」で、点数が低かったカテゴリを1つ選ぶ
- そのカテゴリの「確認する数字」を、改善の前に一度測る
- 改善を1つ試し、同じ数字をもう一度測る
システムを選ぶ前に、「どの手作業を、どれだけ減らしたいか」を数字で決めておくと、比べる観点がはっきりします。
まとめ
- 業務改善は、お客様の目に触れない手作業から始める
- 業務を8つに分けると、どこに手間が集まっているかが見えやすい
- 改善の前後で、同じ数字を測って比べる